中小企業の事業を理解しようとするとき、私がよく着目するのが「複雑性」です。
複雑性に注目すると、その会社の実態が見えやすくなり、課題も浮かび上がってくる。なぜかというと、複雑になっているところは、その会社の弱みになっている可能性もあれば、逆に強みになっている可能性もあるからです。
つまり、複雑であるということ自体が、強みか弱みか、どちらかのサインになっている。そこに目を向けると、話が早いのです。
複雑性が、弱みになっている場合
まず、弱みのほうから。
たとえば、商品があまりに多くて、管理が大変になっている。受注のパターンがいくつもある。顧客ごとに条件がばらばらで、対応が複雑になっている。生産工程が何パターンもある。
単一で、標準化された、シンプルな形ではなく、こうした複雑なパターンが多すぎる状態。これは、複雑になっていると言えます。
こうなると、相当なマネジメント力が必要になります。ところが、多くの中小企業では、このマネジメント力が追いついていない。むしろ、後付けで複雑性だけが増していく、というケースが目立ちます。
よくあるのが、こういう流れです。売上が減ってきた。では営業しよう、となる。そこで、これまで不得意だった分野、やったことのない商売を新たに加える。売上をつくるためです。
すると、経済性の異なるビジネスが、社内に二つ、三つと並存することになる。儲け方の違う商売が、同じ会社の中に混在する。これも複雑性です。そして、この複雑性を管理しきれずに、かえって全体の採算が見えなくなっていく。
複雑性が、強みになっている場合
一方で、複雑性が強みになっていることもあります。
オペレーションが複雑である、あるいはビジネスモデルが複雑である。だからこそ、他社が簡単には真似できない。あるいは、真似したくない。
参入するには、その複雑さを理解し、こなせるだけの体制が要る。それが面倒だから、他社は手を出さない。結果として、その複雑性が参入障壁になり、自社を守る強みとして働いている。こういうケースもあるわけです。
だから、複雑性を入口にする
同じ「複雑」でも、弱みになっているのか、強みになっているのか。それを見極めることが、事業を理解する近道になります。
複雑になっている部分を見つけたら、問うてみる。これは、管理しきれずに弱みになっているのか。それとも、他社を寄せ付けない強みになっているのか。
弱みになっているなら、標準化や絞り込みで複雑性を減らす方向を考える。強みになっているなら、その複雑性をむしろ磨いて、参入障壁として活かす方向を考える。打ち手が、まるで変わってきます。
会社を理解しようとするとき、きれいに整理された部分より、複雑に入り組んだ部分に目を向ける。そこにこそ、その会社の実態と、次に手をつけるべき課題が潜んでいます。