数字に近いか、数字に遠いか

業績が芳しくない会社では——自分自身もそうなのですが——まず決算書などの数字を見て、そこから改善策を考えます。数字を起点に打ち手を組み立てる、というやり方です。

これは自然なことですし、出発点としては間違っていません。ただ、以前から書いているように、数字はあくまで結果です。その数字に行きついたメカニズムを解き明かして、そこを直さなければ、本質的な改善にはなりません。

そして、このメカニズムをたどっていく中で、あることに気づきます。数字には直接的に影響しないのに、じわじわと、本質的に効いてくるものがある、ということです。

それが、人材育成と仕組みの2つです。

数字に近い打ち手と、遠い打ち手

改善策には、「数字に近いもの」と「数字に遠いもの」があります。

数字に近いものは、たとえば値上げ、コスト削減、不採算の整理です。手を打てば、比較的すぐに数字に表れる。効果が見えやすいし、着手もしやすい。

一方で、人材育成と仕組みづくりは、数字に遠い。やったからといって、すぐに数字が動くわけではありません。効果が見えるまでに時間がかかる。

人は、見えるものに目が向く

人は、数字で見えることに、どうしても目が向きます。見えるから、着手しやすい。

逆に、数字に遠い人材育成と仕組みづくりは、なかなか優先順位が上がりません。効果がすぐに見えないから、後回しになる。特に、短期の成果を求めていると、いつまでたっても着手されないままになります。

「大事なのは分かっている。でも、今はそれどころではない」。そう言っているうちに、時間だけが過ぎていく。多くの会社で、これが起きているのではないかと思います。

続けることの、難しさ

さらに、人材育成と仕組みには、もう一つの難しさがあります。運営し続けることの難しさです。

一度始めても、続かない。人材育成の取り組みが、いつのまにか立ち消えになる。せっかくつくった仕組みが、運用されずに形だけ残る。数字に近い打ち手が「やれば終わり」なのに対して、人材育成と仕組みは「やり続けて、はじめて効く」ものだからです。

始めるだけでも優先順位が上がりにくいのに、さらに続けるのが難しい。だからこそ、数字に遠いものは、放っておくと永遠に手がつかないままになります。

遠いものにこそ、本質がある

しかし、メカニズムをたどっていくと、結局ここに行き着きます。

数字に近い打ち手で、目先の数字は改善できる。それは必要なことです。ただ、その改善を支え、続けていく土台になるのは、数字に遠いところにある人材育成と仕組みなのです。

だとすれば、数字に近いものだけに追われず、意識して、数字に遠いものにも手をつける。すぐに成果が見えなくても、続ける。そこに、本質的な改善の分かれ道があるのだと思います。

見えやすいものと、見えにくいもの。着手しやすいものと、しにくいもの。その両方に目を配れるかどうかが、問われているのではないでしょうか。

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