会社の規模が少し大きくなると、中間管理職の役割が組織運営に必要になってきます。主任、課長、部長といった立場の方々です。
組織運営の課題としてよくお伺いするのが、こういうものです。経営陣が、やりたいことや、チャンス、リスクについて、いくら丁寧に話をしても、組織全体が同じ方向に動くのは簡単ではない。特に、ある程度の規模になった企業で、この悩みをよく聞きます。
組織は、そもそも同じ方向にはそろわない
まず、割り切って考えてみます。
組織といっても、人の集合体です。同じ情報を得ていても、人によって考え方も判断軸も違う。全員がまったく同じ判断をする、ということはあり得ません。イレギュラーな判断や動きも当然出てきます。
だとすれば、狙うべきは「全員をぴったりそろえること」ではなく、「大枠では外さない動き」だと思います。もちろん、その動きがあまりに緩慢だったり、方向のズレが大きかったりするのは抑えたい。ただ、完全な統一を目指すのは、そもそも人の集まりとしては無理があります。
ここで一つ、押さえておきたいことがあります。遠くの経営陣よりも、近くの同僚の声のほうが、影響が大きいということです。
組織は、点と点である
組織というと、人と人が線でつながっていて、ここが動けばあちらも動く、という図を思い浮かべがちです。でも、それは理想であって、実際は違うと感じます。
人と人は、どこまでいっても点と点です。その点が、バランスを崩したり、また整ったりする。ある意味でランダムな動きの中にある。だからこそ、大枠さえあれば、その中である程度は自由であったほうが、かえって新たな発見につながるのではないかと思います。
そう考えると、ミッションやビジョンといった、会社全体の枠組みを整えることは、非常に重要です。ただし、日々の判断や行動を実際に方向づけているのは、それだけではありません。
すべての点が、同じ重さではない
ただ、点と点といっても、すべてが同じ影響力を持っているわけではありません。
その中には、特に影響力の強い点があります。物理でいう作用点、力点のようなものです。ここが動くと、周りの点にも力が伝わり、連鎖して動いていく。
組織運営の鍵は、この力点をどう押さえるかにあります。そして、その力点にあたる場所に、ロールモデルとなる人材がいると、状況が変わります。
一つの点の動きにすぎなくても、それが他の点に影響を与えていく。結果として、組織の動きが緩慢にならず、俊敏になったり、感度が高くなったりする。バラバラな点の集まりに見えても、力点さえ押さえれば、全体が動き出すのです。
だからこそ、その力点に「ああなりたい」と思える人がいるかどうかが、決定的に効いてきます。
日々を動かすのは、近くのロールモデル
日々の現場で効いてくるのは、近くにいる人の存在です。上司でも、同期でも、部下でもいい。「ああなりたい」「仕事ができるな」「すごいな」と思える人。つまり、ロールモデルとなるような方の影響が大きい。
こういう方が、現場での組織運営の、実質的なキーマンになります。
逆に、ロールモデルとなる人材がいないと、どうなるか。いくらミッションやビジョンを語っても、日々の一つひとつの活動は、過度にバラバラになりやすい。そして、「憧れ」というものが会社の中に、日々の仕事の中にないと、どうしても無機質で、その場しのぎの対応になりやすいと感じます。
「憧れ」は、人の視座を上げる
もちろん、働く理由は人それぞれです。ただ、それでも「憧れ」は、人の能力や視座を引き上げる力を持っています。
そういう存在を見つけられた方は、自身のキャリアの中でも恵まれているほうだと思います。ただ、これを個人の幸運に任せておくのは、もったいない。
経営の視点から言えば、ロールモデルになりうる人材を、どう育て、組織の中でどう活かしていくか。これは、大切な論点です。憧れの対象となる人を、意図的に育て、その影響が周りに及ぶような場をつくる。そこまで踏み込めるかどうかで、組織の動き方は変わってきます。
ミッションやビジョンは大切です。しかし、それだけでは足りない。日々の運営を実際に動かすのは、憧れの対象となるロールモデルの存在です。そこに、組織運営の鍵があるのではないかと感じています。