経営計画や事業計画が何故必要なのか?はこちらを
どういう内容を記載し、どういう内容だとダメなのか?はこちらを
では実際に経営計画/事業計画をつくるという際の進め方なのですが
先ずは会社として何の目的でつくるのか?誰がつくるのか?
何でもそうですが、先ずは今回事業計画をつくろうと考えた、その背景と目的を明確にすべきです
その背景と目的を踏まえて、誰がつくるのが適切なのか?
原則論としては、経営の方向性と具体的活動をまとめたものが、経営の計画や事業の計画とされるわけですから、誰が経営するの?誰が事業を動かすの?と言えば、
中小企業であれば、社長以外ありえないと思います
もちろん、手を動かすとか、資料にまとめるというは社内幹部陣と分担したらいいとおもいますが、一義的に内容を主導して推進する責任者は社長以外ありえないという考えです
なお、もっと言うと、他人がつくったものを経営者が取り組むとは思えません
事業計画という書類はあるが、経営者も従業員も何ら計画など見ておらず、下手したら存在すら知らないというのは実はよく見かける光景です
経営の計画であり、事業の計画ですから、中小企業なら経営=事業というのことが大半ですので、そこに責任を負う社長が推進するのが必然であるということです
作成ステップ① 目指す先と現状の差を認識する
- まずは、事業としてどういう状況を目指しますか?ありたい状況とそれを数字面(業績数字や追っている数値KPIなど)で表現する
- 例えば、○○地域No1を目指す、○○商品が毎月○○売れる状態をつくるとか、中小企業であっても従業員の報酬面を大企業と同等以上にする、借入を○億円から○億円まで減らして事業承継を完遂する など
- それを実現するのは、数字で言えばどのくらいの利益がでていないといけないのか?
その利益を出すにはいくらぐらいの売上が必要となるのか?(この時点では大体の利益と売上のイメージが持てれば十分です)
- 他方、現状はどうなのか?これも定性的情報と数値情報で現状はどうなっているのか?を改めて認識しなおす
- 「認識しなおす」というのがポイントで、数年前の感覚が実は現在とは異なっているケースが多くあります。それはコロナ禍といった大きな外部環境変化が原因のモノもありますが、社内の環境も実は大きく変わっているとか、仕事の内容が変わっているなどもあり、しっかりと再確認したほうがいいです
- 具体的には、社内の幹部陣に話を聞く、社外のお客様に話を聞く
- 財務分析を行う
- どこで儲かっていて、どこが赤字なのか?を把握する などなど
- 要は、今の会社の状況を多面的に把握し、認識しなおす
なお、上記の1と2については、どちらが先でもいいと思います
現実的には、2の現状を振り返りながら、具体的に今起きていることから着想して、
もっとこうなりたい!とか、おかしいこうなっていなければ!
というところから、1の目指す所が見えてくるというケースの方が多いかもしれません
作成ステップ② 差を埋める(課題解決)のための方向性を考える
目指したい状況と現状の差を認識すると、それは理想と現実との乖離とも言えますが、その乖離こそが「課題」と呼ばれるもので、いくつか課題が見えれば、その課題に対しても優先すべき課題を選択し、選択された課題をどう解決していくか?を考えていくことになります
- 理想と現実の差を埋めるために為すべき取り組みの選択(優先すべき課題の選択)
- 理想と現実には色々な観点で差が出ていると思います。売上の差、利益の差、体制の差、顧客の差、能力の差などなど、ですが、全ての課題を同時に対応することは難しいので、経営として優先して対応すべき課題を決めていきます
- 複数選択してもいいですが、多すぎると対応しきれません
- 優先対応すると決めた課題について、解決の方向性を考える
- 対応すべき課題について、その解決策をいきなり具体的に考えるわけではなく、その課題の解決をどういう方向性で進めていくのか?を考えていきます
- 例えば売上について大きな差がある場合、売上を上げるための具体的な施策を出すのではなく、売上を上げるための大きな方向性を考えるということです
- 売上を上げるために、何をしてもいいわけではないはずです、どういう方向性で売上を上げていくのか、方向性(進んでやり方向)と逆に制約(こういうのは止めよう)という方向性を出すわけです
- ここはポイントで、いきなり各論に入るよりも、少し大きな方向性で色々考えていくのが重要で、大きな方向性が見えると、その方向性の中に色々な各論が出てきます(抽象的→具体的へ)
- もちろん、方向性を考えるのが大変、しんどい、ということであれば、各論から入ってもいいです。その場合、出てきた各論をカテゴリ分けするとかして、大きな方向性としてカテゴライズできないか?という整理をしてみてほしいです(具体的→抽象的にしていく)
なお、ここで現実的な話として、自社の持っているリソースを活用する方向性で考えた方が、
自分たちらしさのある計画であり、勝ち筋になるものと考えてます
リソースというのは曖昧な表現ですが、自社を構成する様々な活用可能な要素のことで、
ヒト、モノ、カネ、情報など言われますが、お客様との関係性や、技術、ノウハウ、会社が当たり前に行なっている業務、機能なども客観的にみれば、価値あるリソースになりえます
自分たちがイメージできないものは、実行には移せませんし、
イメージできないものには、気持ちも入りませんし、
好きなこと、やれることからイメージを沸かせていくことは大切な視点と考えてます
※表現が難しいため、分かりづらいなどあれば、遠慮なく問い合わせください
作成ステップ③ 課題に対して活動を考える(具体策)
ここでようやく、具体施策を考えてみる段階になります
- 優先して対応すべき課題の解決策を具体的に複数出して行く
- 優先対応する課題の方向性が見えてくれば、その方向性の中で、具体策を考えていきますが、方向性という枠組みがあると、具体的なアイディアが出しやすくなるという効果があります
- 例えば、「売上が足りない」という課題だとあまりに大きすぎるため収拾がつかないのですが、上記のようり方向性を定めておき、売上を上げる方向性・枠組みが見えると、具体策が出やすくなります
- なお、事業計画をつくる際に、現場の声を反映するということで、計画の中身を丸投げしてしまうことがありますが、冒頭での記載の通り、原則は経営者が主導して作成すべきであり、少なくとも方向性ぐらいまでは経営者・経営陣で決めていき、各論の世界に入ってからは、多くの方にアイディアを募るのが良いと考えています
- 逆に各論の具体策まで経営陣が考えると、現場の実務者にとってもイマイチ自分事にならないため、具体策の段階からはむしろ多くの方を巻き込む動き方が有効です
- 具体施策は全部を同時期にはできませんので、取捨選択(優先・劣後)していく
- 取捨選択の方法については、産業動向、収益構造、課題解決の重要性などによって変えていくべきなのですが、一つの考え方として、速さと規模の観点から選択していくのもあります
- ですが、注意として、速さは遅い(時間はかかる)が、成果の規模は大きいものは、劣後できません。
時間がかかっても成果の規模あるならば、逆に最優先で今のうちから手を付けるということが重要です
(だって、時間がかかるわけですからはやくやらないと)
作成ステップ④ 活動を具体化する(神は細部に宿る!)
- 具体的な活動施策について、誰が、いつまでに、何を行うのか?を明確にする(一般にアクションプランと呼ばれるものを作成)
- 活動を具体的にしていくプロセスです
- 実際に推進する方を中心に何を行っていくのか、考えて頂き、一義的な責任者たる社長が確認し、もっとこうしてほしいとか、こういうのどうか?とか、議論を行いながら、形作っていくことが大切です
- ここでも、「後は任せた」で放任する姿勢では、結局のところ事業計画全体も責任者不在の魂の籠らないものになり果てます
- 「神は細部に宿る」しっかりと手を抜かず、具体施策を詰めていくことが大切です
作成ステップ⑤ 活動を数字化する
- 具体化ができたら、それを数字に落とし込むことです(ステップ④と⑤は同時並行でもOK)
- 可能であれば勘定科目別に数字に落とし込むことが望ましい
- 難しければ、売上○○円の増加成果とか、コスト○○円の削減成果とか、数字評価をしていくことを拘ってください
- もちろん、数字にならないような成果というものもあります。数字に置き換わらないものでも大切な取り組みですので、数字が無いとNGというわけではないです
- 評価基準を明確にする
- 業務ルールを明確にする などなど
- 数字にできるものは拘って数字化するという姿勢が重要ということをご理解いただければ十分です
作成ステップ⑥ PLをつくる
- 具体的活動が明確となり、数字化もできれば、それを損益計算書に落とし込んでいく
- ステップ⑤で勘定科目別に成果を数字かできていれば、この作業は簡単です
- 勘定科目別にできてなくても、売上やコスト削減の数字がでれば、詳細な科目別にならなくても、概略でPLはできます。例えばこんな粒度でも十分なのではないでしょうか?
- 事業計画を作成する目的に応じて、どこまで詳細にしていくのか決めていけばいいと思います
売上 ←売上が伸びる施策ならここがどれだけ上がるのか?
-)売上原価 ←売上原価が下がる施策ならここがどれだけ下がるのか?
――――――――――――――
粗利
-)販管費 ←販管費が下がる施策ならここがどれだけ下がるのか?
――――――――――――――
営業利益 ←結果として、利益がどうなるのか?
作成ステップ⑦ BSをつくる
次はBSなのですが、この辺りになってくると、少し会計的な知識が無いと難しくなってきますので、本当にここまで必要とするのか?次第で考えてください
なお、厳密に作成する場合には、当然ですが全てのBS勘定科目について整えていきます
- BSの中でも影響の大きいものとして、投資計画(設備他)を検討する
- 今後の投資予定などあればそれを前提としてBSの資産勘定が増加していきます
- また、設備投資であれば減価償却費も発生しますので、ステップ⑥のPLにも影響がでます
- PL、BS、CFは連動しますので、BSの作成については顧問税理士の方や、外部専門家を頼るのもよいかもしれません
- BSの中でも影響の大きいものとして、資金計画を検討する
- 設備投資の規模とも関連し、資金をどうしていくのか?が重要です
- 借入・返済といった負債科目の調整も必要になります
作成ステップ⑧ CFをつくる/資金繰り計画をつくる
PLとBSができるとCF(キャッシュフロー計算書)ができます
しかし、このCFも会計知識が無いと作成するのは少し大変かもしれません
また、上述の通り、PLとBSからCFは作成されますので、PLとBSが決まってこないとCFも作成できませんので、事業計画策定の目的に準じて作成すればよいと思います
個人的には、中小企業においては、CFというよりも、資金繰り表を作成し、資金繰りがどうなるのか?を示すことで十分と考えています
作成ステップ⑨ 返済計画をつくる(事業再生なら必須)
これは事業再生においては主となる部分ですが、要はリスケ中など正常な約定弁済ができていない場合には、事業計画を作成の上、その計画に沿ったPLやBSによって、資金がどうなるのか?
結果として、返済余力が出るのか?出たらどの程度返済が進むのか?
が一番の大きな注目点になります
ですので、事業再生における事業計画においては、ここは非常に重要になります
具体的には、作成ステップ⑧のCFまたは資金繰り計画を元に、各年度における返済見込み金額を示していき、
よく見かけるのが、残高プロラタ返済と言って、各金融機関別の借入残高の比率に準じて返済原資を配分していく方法で各金融機関にどのくらい返済が進む見込みなのかを示すことになります
まとめ:自らの意志を入れること/人材育成につながる
大まかな事業計画の作成ステップをまとめてみましたが、如何でしょうか
各ステップには細かな論点や注意点など上げればきりが無いほどにありますので、事業計画作成の目的に応じて、必要があれば外部のアドバイザーに相談すれば良いと思います
しかし、大切なのは、経営者自らが経営の舵取りのために必要だと考え、自らが作成していくという姿勢が無ければ、所詮計画など机上論ですし、意味がありません
魂を込め、細部に拘り、経営シナリオとして先を見通し、舵取りを行う
そんな本質的な目的のために事業計画という計画づくりに時間を費やすことが重要だと思います
(周りが必要というから、つくりました…では意味が無いということです)
なお、事業計画の作成プロセスには、多くの社内や社外の方の巻き込みが必要となったり、事業や業務について広範囲な理解が無ければやり切ることが難しいとう側面もあります
そのため、作成実務(手を動かす)においては、将来の経営者や幹部候補の方が参画することで、有意義な人材育成の機会ともなります
そういった副次的メリットもある点は強調しておきたいと思います
おまけ:計画も具体的な行動なければ絵餅
個々の具体的なアクションが必要となりますが、いくつか参考まで
価格交渉については、こちらで記載しました…記事へ(リンク)
コスト削減については…記事へ(リンク)、
売上拡大については…記事へ(リンク)