事業再生の必要性の判断は誰がするのか?

倒産件数は増加?

昨今、コロナ禍で展開されたゼロゼロ融資の反動で、所謂ゾンビ企業と呼ばれるような企業が増加し、23年~24年で倒産件数が多くなるといわれており、実際に新聞などでは、倒産件数は増加していると出ています

周囲の話からは、どちらかというと、コロナがどうとか関係なく、それ以前から業績不振であった企業がゼロゼロ融資で資金繰り改善し、一定の時間的猶予ができたものの、その時期に改善活動などが進まず、コロナ明けでも業績が低迷し(コロナの問題ではないのでそりゃそうなるだろう)、いよいよコロナ融資の資金も枯渇しだすということ

社会的な動きとして、金融行政も資金繰り支援から事業再生支援へ舵を切るという段階になっているとのこと

さて、個人的に感じるのは、事業再生に関する話は、行政、金融機関、士業関係からの支援の制度、支援拠点の話がでるが、

当の企業側はどう捉えているのか?というのは疑問に思っているところです

周囲に相談相手はいる

行政はよろず相談室や、商工会議所等の相談室など、様々な相談を受ける体制を持ち、中小企業基盤整備機構のサイトに行けば色々な情報もある

金融機関も債権者として決算書などを確認しながら業績動向をみて、色々なアドバイスをしてくれる

税理士さんも(人によるが)やはり顧問先の業績に対してはアドバイスを頂けると思います

危機感と行動は違う

しかし、どうもそのようなアドバイスを自ら取りに行こうとか、言われたから動こうとはなかなかなっていないように感じます。

もちろん、待った無しの状況まで追い込まれていれば、動き出しはあるものの、

多少の危機感では、ギリギリまで動かないということが多いと思う

ただ、私個人と照らしたときに、例えば健康面で予防的に動けているケースは実は多くない気がするのです。もう相当に症状も出て身動きができないとなれば、救急車も呼びます

しかし、少しぐらいならば「まだ大丈夫だろう」、「少し様子を見るか」となるのが人間の性であり、

もっと言えば、経営者は他人にとやかく言われたくない、ということもあるかと思います
(私の親もそうでした)

そもそも、会社や事業のことを分からない人間に言われたくない、ということもあるかもしれません

と考えれば、今の状況は人間の性として、当然といえば当然なのかもしれません

そうなると、支援者側がやれることというのは、

①可能な限り、支援体制を周囲に整えて、相談を促しつつ、相談があればしっかりと答えられるように準備しておくこと

②どこからが「大丈夫ではない」のか、その基準や考え方を定義して、伝えていくこと

③支援者側が単に会計や財務のことだけでなく、事業を理解し、経営者や従業員の想いに向き合っていくこと

特に②、③はまだまだ企業に関わる方のコンセンサス(一般的な共通見解)は内容に思います

”危機感”をもった対応が必要な基準はどこか

現時点で明確な定義や指標は無く、別途しっかりと考えを整理したいと思います

しかし、そういった基準のようなものは、主観的なものが多く、人により様々であり、

一般的には、以下のような状況になっていれば周囲の関係者も状況が厳しいと言い出すかと思います

  • 2期以上の連続赤字
  • 債務超過
  • 資金繰りが厳しい状況(リスケ突入)
  • 業界全体が不況状況

これらは、概ね決算などから読み取れますので、客観性もあるかと思います

しかし、数期連続赤字でも、資産超過で余力があると、まだ周囲が強く言えないとか、

営業赤字でも、所有不動産の賃貸収入で営業外利益があり、経常利益は黒字とかだと、これまた強く言えないとか、

危機感を抑制し、周囲からのアドバイスが届きにくくなるケースは多く、

決算書を閲覧できる、税理士さんや、金融機関は、基本的には当該企業から仕事をもらっている立場になるため、どうしても厳しい現実を伝えにくいということがあると思います
(金融機関も審査部などは別だと思いますが、直接やり取りをする営業店はどうしても言いにくい相手になるかなと)

決算書類だけでは兆候は読み取れない

決算書や試算表の数字は、全て業績”結果”でしかなく、その後の見込みや兆候は捉えにくいという問題があります

もちろん、トレンド分析のようなものは決算書ならば年次推移、試算表ならば月次推移ということが可能ですが、どこまでいっても数字のトレンドであり、事業の中身を踏まえた実際のトレンドではないという点が注意です

今後、ますます企業の業績動向を理解し、事業再生の必要性の「兆候」を捉えていく、先手での対応も重要だと思いますが、兆候を捉えるには、通常の財務分析では不十分と考えます

財務分析+事業分析+組織分析が必要

そこには、財務分析だけでなく、事業分析(事業構造はどうなっていて、今後どう変わっていくのか)、組織分析(組織能力の継続性など)も必要で、財務数値だけでないKPI、モニタリング項目の設定と、その動向把握により兆候把握の精度が上がると考えます

この事業分析や組織分析を行うには、外部環境理解と内部環境理解の両方が必要となり、結果として、上記③の事業の運営主体である、経営者が従業員の想いのようなウェットな部分への理解も同時に必要となる

そんな理解をしています